韓国の統計サイト「アイオンケル」は、プレイヤーが投稿した戦闘ログを集計してクラス別のDPSを公開しています。日本語圏でも「どのクラスが強いのか」の根拠としてよく引用されますが、この数字は見る日と条件によって大きく変わります。同じクラスが数日で2位から8位まで落ちることも珍しくありません。
この記事では、その数字がなぜ動くのかと、比較するときに何をそろえる必要があるのかを、実際のデータを追いながら整理します。クラスTierまとめで使っている実測値も、ここで説明する条件で取り出したものです。
同じクラスが数日で2位にも8位にもなる
わかりやすい例がスピリットマスターです。2026年8月5日の集計では全クラス中2位(約22.3万)でしたが、8月10日には8位(約15.4万)まで落ちています。この間にスピリットマスターへの調整は入っていません。クラスの性能が変わったのではなく、集計の仕組みが数字を動かしています。
理由①: 集計は毎週水曜にリセットされ、週内で積み上がる
アイオンケルの集計は、毎週水曜にリセットされ、そこから1週間かけて記録が積み上がっていく方式です。ある遠征ボスにおけるグラディエーターの記録数を日ごとに追うと、次のようになります。
| 日付 | 記録数 | 中央値 |
|---|---|---|
| 8月4日(火) | 162,060件 | 約106.9万 |
| 8月5日(水) | 1,946件 | 約116.9万 |
| 8月10日(月) | 124,511件 | 約109.6万 |
水曜に記録数が2,000件を切るまで落ち、そこから月曜までに12万件まで戻っています。注目したいのは中央値のほうで、記録が少ない週の前半ほど中央値が高く出ています。週明けすぐに高難度コンテンツへ行くのは装備を仕上げた層が中心で、一般層の記録は週の後半にかけて増えていくためです。
つまり水曜に見た数字と月曜に見た数字は、そもそも別のものを見ています。比較するなら曜日をそろえる必要があり、1週間分がすべて積み上がった火曜が「その週の完成値」になります。
理由②: 戦闘力をそろえないと、調整の効果は読めない
もうひとつの落とし穴が装備の進行です。プレイヤーの装備は毎週強くなるので、クラスに何の変更がなくても数字は勝手に上がっていきます。前後の数字をそのまま引き算すると、この上昇分を「強化された」と読み違えます。
実際に確かめてみました。下表は遠征ボス9種の記録について、2026年7月14日(火)と8月4日(火)を比較したものです。「生値」はクラス全体の中央値をそのまま比べたもの、「戦闘力をそろえた値」は同じ戦闘力帯(2万刻み)どうしだけを比べたものです(戦闘力60万以上・両日とも200件以上の記録がある帯のみを使用)。
| クラス | 生値 | 戦闘力をそろえた値 |
|---|---|---|
| 拳星 | +93.87% | +24.24% |
| チャンター | +34.35% | +26.98% |
| クレリック | +27.62% | +19.90% |
| テンプラー | +22.53% | +12.84% |
| レンジャー | +6.24% | +1.99% |
| アサシン | +5.90% | +0.84% |
| グラディエーター | +5.32% | −1.53% |
| ソーサラー | +1.80% | −2.15% |
| スピリットマスター | −3.24% | +1.23% |
この3週間、生値では9クラス中8クラスがプラスになっています。全クラスが同時に強くなったわけではなく、装備が進んだ分がそのまま数字に乗っているだけです。
差がはっきり出るのがグラディエーターとソーサラーで、生値ではプラスなのに、戦闘力をそろえるとマイナスに反転します。「同じ戦闘力の人どうしで比べると、7月より火力が落ちている」という意味になり、生値だけを見た場合と結論が逆になります。
拳星はさらに極端で、生値では約94%の上昇ですが、戦闘力をそろえると約24%です。7月1日実装の新クラスで装備の進みが速いため、上昇分の大半がクラスの性能とは無関係でした。1週間だけを切り出した7月28日→8月4日でも、生値+16.48%に対して戦闘力をそろえると+3.09%と、5分の1以下になります。
なお拳星は条件を満たす戦闘力帯そのものが少なく(他クラスが120〜150帯なのに対し9〜42帯)、他クラスより誤差が大きい点には注意が必要です。
中央値と最大値は、別のことを表している
ランキング表では中央値が使われることが多いのですが、中央値は「平均的な人の数字」、最大値は「そのクラスの上限」で、意味が違います。両方を見ないと評価を誤ります。
例えばスピリットマスターは、戦闘力60万以上の集計で中央値は9クラス中4位ですが、最大値は8位まで落ちます。韓国の同クラス掲示板で言われている「下限は高いが上限が低い」という体感は、この2つの数字の差として現れています。逆にグラディエーターは中央値5位・最大値2位で、上振れの大きさが数字に出ています。
「カカシの数字」と実戦の差は、韓国でも論争になっている
指標の読み方そのものが、韓国のプレイヤー同士でも一致していません。アサシン掲示板では「動かない的への測定では1位でも、動きの多い実戦では遠距離クラスに抜かれる」という指摘があり、グラディエーター掲示板では「区間ランキングは測定条件に恵まれた結果なので実力を表さない」という反論が出ています。
統計に載るのはログを投稿した人の記録だけという点も重要です。うまくいった周回ほど投稿されやすく、母集団はプレイヤー全体とは一致しません。数字は「傾向」として扱うのが妥当です。
ティア表そのものについて
あわせて知っておきたいのが、韓国コミュニティに合意されたティア表は存在しないということです。掲示板で公開されているティア表は、いずれも投稿者自身のクラス視点から書かれたものであることが明記されています。
そして取材していて最も強く感じるのが、自クラス評価と他クラス評価はほぼ必ず逆転するという傾向です。グラディエーター・レンジャー・スピリットマスターはいずれも「他クラスからは強すぎると言われ、自クラス掲示板では弱いと嘆いている」状態でした。ティア表を読むときは、書き手がどのクラスの視点なのかを確認するだけで受け取り方が変わります。
「調整の効果」はどう判定しているか
クラス調整の前後比較では、上記に加えてもう2つの処理をしています。
- 調整されなかったクラスをゼロ点にする — 戦闘力をそろえても、立ち回りの習熟などで全クラス共通の底上げが残ります。パッチノートで触れられていないクラスの平均変化を「その週の自然な上昇分」とみなし、全クラスから差し引きます
- 自然な揺れ幅を超えたときだけ「変化」と書く — 調整がなかった週にも、クラスによっては±15%規模の揺れが起きることを過去データで実測しています。この揺れ幅(クラスごとに±5〜16%)を超えない変化は、当サイトは「変化を検出できず」と表記します。これは「変化がなかった」という意味ではなく、「当サイトの精度では判別できない大きさだった」という意味です
また、数字を見る前にパッチノートだけを読んで「どのクラスがどちらに動くはずか」を記録しておき、結果と突き合わせる方式を取っています。数字が動いた後から理由を探すと、どんな変動にも説明がついてしまうためです。
当サイトが使っている条件
以上を踏まえ、当サイトのクラス評価では次の条件で数字を扱っています。
- 火曜の数値に統一する — 週の完成値どうしを比べます
- 戦闘力60万以上に絞る — 低戦闘力帯の記録が混ざると平均像がぶれるため
- 前後比較は同じ戦闘力帯どうしで行う — 装備の進行を差し引くため
- 中央値と最大値の両方を見る — 平均像と上限を分けて評価するため
- 掲示板の議論と突き合わせる — 数字だけでは編成需要や対人の評価は測れないため
数値はあくまで判断材料のひとつで、最終的なティアは複数の情報源を突き合わせた当サイトの整理です。
まとめ
アイオンケルの数字を読むときは、①曜日をそろえる(火曜が週の完成値)、②戦闘力をそろえる(そろえないと調整の効果は読めない)、③中央値と最大値を分けて見るの3点を押さえれば、大きな読み違いは避けられます。特に②は、生値ではプラスのクラスが実際にはマイナスだった、というように結論が逆転することがあります。
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